電解銅箔製造について

エネルギー転換、サステナビリティ、グローバルサプライチェーンの地政学的な問題などから、電解銅箔は、近年注目されている素材です。さらに、電解銅箔は現代のデジタル社会において重要な素材であり、パソコンやスマートフォンといった精密機器から最もシンプルな電子機器まで、あらゆる電子機器に使用されています。そのため、電解銅箔はこれからの社会にとって重要かつ戦略的な材料と位置づけられています。  

この記事では、電解銅箔製造の主要プロセスをご紹介します。まず、最も重要な部分であるカソードのチタンドラム及びアノードの電解工程に触れ、アノードによる表面処理の説明へと続きます。 

電解銅箔の電解工程について

電解銅箔の電解工程について

銅箔製造において、なぜ電解工程が重要なのでしょうか。 

電解工程は、溶解した銅イオンを電流で還元析出させ、カソードのチタンドラムの表面に金属箔のような薄い金属層を形成するプロセスです。 

電解銅箔の品質は、電解に用いる原料、電流密度、添加剤の種類によって大きく異なります。電解銅箔の表面粗さの値も変化します。どうして電解銅箔の粗さが重要になるのでしょうか。電解銅箔の表面の滑らかさや粗さは、各種基板材料との密着性や、プリント基板における銅箔内を流れる電流に重大な影響(導体損失)を及ぼします。 

つまり、電解銅箔の表面が滑らかになればなるほど、電流の流れがよくなり(導体損失が少なくなり)、高周波帯域における信号がスムーズに流れるようになります(伝送損失の低減)。 

電解銅箔の電解工程には、カソードとアノードの2種類の電極が必要です。一般的に、電解槽はカソードのチタンドラムとアノードのDSA/DSE®(図1参照、デノラ社製)を組み合わせた構造になっています。 

電解銅箔の電解工程でカソード(チタンドラム)とアノード(アノード構造体)が重要なのはなぜでしょうか。 

カソード(チタンドラム)

カソード(チタンドラム)

図2-銅箔の表面

電解工程を経て、カソードのチタンドラム表面に銅の金属箔が還元析出されます。このカソードは回転させるため、ドラム缶のような構造をしています。ドラムの回転速度と電流密度によって、銅箔の厚みをコントロールすることができます。さらに、カソードのチタンドラムの表面状態は銅箔表面の粗さに影響します。その結果、ドラムに面した光沢のある銅箔とマットな銅箔の両方を実現できます(図2参照)。 

アノード及びアノード構造体

銅の電解工程では、アノードも大事な役割を担っています。製造プロセスを最適化するにあたり、アノードはカソードのチタン製ドラムの構造に合わせた形状にする必要があります。したがって、ラジアルアノードが理論的に最良の選択となるはずです。とはいえ、コストやメンテナンスといった経済的な面を考慮すると、アノード構造体は着脱式アノードを採用することが最も適していると言えます(図1参照)。 

実際、デノラ社では、このような電解銅箔製造プロセス用のアノードを生産しています。DSA/DSE®アノードは、他のアノードと比較して複数の利点があります。以下に例を挙げます。 

・アノードの長寿命化
DSA/DSE®アノードの寿命は、図3に示す通りです。
その結果、DSA/DSE®アノードは、白金被覆チタン電極よりも長寿命であることがわかります。 DSA/DSE®電極の基材は、電解による変形や消耗がほとんどありません。 

図3-DSA/DSE®アノードの加速寿命テストの例

図3-DSA/DSE®アノードの加速寿命テストの例

・省エネ
図4は、硫酸中のアノードの電位を示しています。
DSA/DSE®アノードが、省エネとエネルギーコストの削減に貢献していることがわかります。  

図4-硫酸中のDSA/DSE®アノードの電位

図4-硫酸中のDSA/DSE®アノードの電位

・すべてのアノード及びアノード構造体の設計(着脱式アノード、ラジアル、セグメントアノード)、 は先進的もしくは特許取得済みの技術を採用しています。

・デノラ社のアノードは、さまざまな作業条件下で使用することができ、あらゆる品質の箔と厚さ(極薄箔を含む)を生産することができます。  

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電解銅箔の表面処理プロセスについて

電解銅箔の表面処理プロセスについて

プリント基板用銅箔の製造において、なぜ表面処理が重要なプロセスなのでしょうか。

電解銅箔の製造プロセスにおける表面処理は、目的に応じて使い分けられています(図5参照)。まず、銅箔の表面そのものを洗浄し、銅ノジュールを析出させます。そうすることで、箔の粗さが変化します。
その後、銅箔の表面の酸化を防ぐ(酸化銅を防ぐ)ための腐食防止プロセスをおこないます。

これにより、銅箔の導電性能が時間の経過とともに低下するのを防ぐことができます。 仕上げに、銅箔を保護する目的で、薬品や熱から守る作業をします。 こうして銅箔は幅広い薬品や熱だけでなく、いくつかの物理的な影響をも受けにくくする耐性を得ることができます。

表面処理には、用途に応じてさまざまな処理があり、それぞれの処理に応じたアノード及 銅箔にそのような性質を持たせるため、各々の処理の中でも、銅ノジュールを析出させる処理が最も重要なプロセスと位置付けています。  

図5-表面処理の工程

図5-表面処理の工程

実際、デノラ社では、電解銅箔の表面処理製造プロセス向けのアノードを製造しています。DSA/DSE®アノードは、他のアノードと比較して次のような複数の利点があります。  

  • 省エネルギー
  • アノードの長寿命化
  • 適材適所な手段の活用 

銅箔の製造プロセスには、電解と表面処理という2つの重要なプロセスがあります。 各プロセスでアノードは重要な役割を担っており、アノードがなければ、この製造プロセスを効率よく行うことが不可能です。

そのため、デノラ社はそれぞれのお客様のニーズに最適なソリューションを提供し、 お客様のものづくりにおける目標達成に貢献することを目指しています。  

 

【略歴】清水 秀人
グローバルプロダクトマネジャー
新規事業推進部部長
デノラペルメレック株式会社に25年以上在籍。
中国にて5年営業責任者を務める。
設計・生産技術・研究開発・販売における豊富な実務経験を保有。